世界的な不況の真っただ中で開催されたバーゼルワールド2009。全体を見渡すと、戦略的にプライスを抑える動きが各社で目立っていたが、もともとコストパフォーマンスの高さに定評のあるタグ・ホイヤー（TAG Heuer）は、例年どおり各レンジにバランスよく限定版を含む新モデルを投入。バリエーションを絞った新作発表が主だった今年のバーゼルワールドの中でも非常に充実した内容だったといえる。その中でも目玉となったのが今年で40周年を迎える「モナコ」シリーズ。一貫したテーマのもとに、最先端技術が投じられたコンセプトモデルや、初代モデルの完全復刻、定番モデルのリニューアルなど、バリエーション・価格ともに幅広い展開をみせており、タグ・ホイヤーの巧妙な“戦略”が垣間見える。
　プロダクト以外のトピックとしては、同社の製品をPRする“アンバサダー”として、タイガー・ウッズ、ルイス・ハミルトン、マリア・シャラポワらに加えて、俳優レオナルド・ディカプリオが新たに迎えられ、4月より時計を強く握り締めた印象的な広告キャンペーンがスタート。また日本では4月10日に東京・銀座に旗艦店をオープンしており、不況の時代にあっても明るい話題には事欠かない。
　来年はいよいよ、ブランド創設150周年の節目を迎えるタグ・ホイヤー。今年の新作陣はアニバーサリーイヤーに向けた布石となるのだろうか。今後もその動きから片時も目が離せそうにない。

　　2009年は＜モナコイヤー＞と銘打つタグ・ホイヤー。1969年に発表された「モナコ」の初代モデルは、防水機能のついた世界初の角型クロノグラフであり、スティーブ・マックイーンが映画『栄光のル・マン』の中で着用したことでも有名である。こちらで紹介する「モナコ・ヴィンテージ」は、モーターレーシングをバックアップする＜ガルフ石油＞のロゴが6時位置に入っており、『栄光のル・マン』劇中でスティーブ・マックイーンが走行したポルシェ・ガルフ917Kにインスパイアされた、オレンジとブルーのカラーリングで彩られたデザインがメテノール・ダイヤルに採用されている。また、旧「モナコ・ヴィンテージ」と比較すると、新作は様々なディティールチェンジがはかられたことにも注目。ケース径は1mm大きくなり、ケースバックはスケルトンナイズされて、デュボワ・デプラ2008をベースとした自動巻クロノグラフムーブメント＜Cal.12＞が一望できるようになった。

文：越知絵里香　写真：板津亮

※表記は2009年4月現在のものになります。