近年、勢いよくマニュファクチュール化を推し進めてきたモーリス・ラクロア(MAURICE LACROIX)だが、2008年11月にマーティン・バッハマン氏が新CEOに就任してからはそのスピードを少し緩め、じっくりと熟成したプロダクトメイキングにシフトしているという。
その証拠に、2009年のバーゼルワールドで発表された新作は、昨年の「メモワール1」のように急進的なテクノロジーを駆使したものではなく、既存ラインのリモデルやブラッシュアップが中心となった。しかしながら高級化に向かう流れは以前と変わらず、先鋭的デザインにはますます磨きがかかり、フィニッシングもより豊かになっている。
新しい顔ぶれとしては、モーリス・ラクロアのハイエンドライン「マスターピース」の自社製キャリバーを搭載したコレクションをスケルトン化して、大胆なアレンジを施したモデルがエントリー。また定番となっていた「マスターピース・ムーンフェイズ レトログラード」に新しい自社製キャリバーを搭載し、ケースもダイヤルも完全リニューアルさせることでモダンな変身を遂げた、ニューバージョンが登場した。
複雑機構の開発にも高い意欲をみせるが、一方では30万円台のクロノグラフなども取り揃え、徹底したマーケティングのもと、ターゲットを明確にした幅広いラインナップを展開するモーリス・ラクロア。どのモデルにも共通する細部まで練られたモダンで前衛的なデザインは、時計ファンに限らず、高感度な人たちから熱く支持されそうだ。