数多ある時計の中から自分好みの1本を選ぶ際に、ブランドの個性は大切な指標になる。そのブランドが作りだす世界観やプロダクトの方向性が明確である程、ユーザーはブランドのファンとなり、購入意欲を高めるだろう。
ピアジェ(PIAGET)の個性は、“超薄型ウォッチ”である。そもそも機械式時計を薄く仕上げることは、とても困難だ。パーツの加工精度を高めてタイトなスペースに収めていく作業は、よほど腕に自信がなければ実現できない。それゆえブランドによっては、超薄型ウォッチを複雑機構のひとつに数えているところだってあるほどだ。
ピアジェでは、一貫してこの超薄型ウォッチにこだわってきた。しかもただ薄いだけではなく、いくつもの“世界一”をたたき出しているのだ。
ピアジェの超薄型ウォッチの歴史は、1957年に登場した厚さ2oの薄型手巻き式ムーブメント「キャリバー9P」から始まる。さらに1960年には2.3o厚という自動巻き式ムーブメント「キャリバー12P」をリリース。その後もいくつもの画期的な薄型ムーブメントを作りだしてきた。
しかし今年は、今までとは全くアプローチが異なる方法で、超薄型ウォッチを提案してきた。それが3年間の開発期間を経て完成した「キャリバー900P」。その特徴はムーブメントとケースの裏蓋が一体化しているということにある。裏蓋に歯車などの受けを作り、そこに直接パーツをセッティングする=地板化させることで、地板分の厚みをクリアしてしまったのだ。その結果、ケースの厚みは3.65mmに抑えることに成功した。もはやムーブメント単体の厚みは計測できないが、ケースが3.65mm厚しかない手巻き式ウォッチは、もちろん世界最薄だ。超薄型であることが「時計の美」を表現する最大の方法である、と信じるピアジェならではの新作である。