2003年、「エスプレンディドス」「プロミネンテ」「トルピード」の3コレクションを携えてバーゼル・デビューを果たしたクエルボ・イ・ソブリノス(CUERVO Y SOBRINOS。以下、CYS)。彼らの出自が1882年にハバナで誕生した高級品店であることや、濃厚なラテン・アメリカ文化の薫りを現代に伝える存在であることは、今や時計愛好家には周知の事実になっている。
またキューバ革命以来、休眠状態にあった当ブランドを現代に蘇らせた現社長マルツィオ・ヴィラ氏のカー・エンスージアストぶりが、ついに昨年の2013年、自社名を冠するカーレース「クエルボ・イ・ソブリノス・カップ」の開催に至ったことも喧伝された。
バーゼル・デビュー後の10年間、毎年発表される豊富なコレクションとともに、着実な歩みを見せるCYSの活動は一定の成果を挙げることに成功したと言えよう。となるとデビュー11年目に入った本年、CYSの次なるステップが気になるところであった。
その回答のひとつが新作「エスプレンディドス ミステリオ(Esplendidos Misterio)」である。これまでのCYSには無かったミステリアスな時刻表示方法を用いた当モデルは、ある意味において新作の発想に余裕が出始めたことの証であり、ブランドとして“一皮むけた”ことの宣言でもあるように見て取れる。その余りにも強烈なインパクトさに見過ごされがちな一方、他の新作においてもCYSの個性は健在なことも忘れてはならない。
芸術点では高得点の「ヒストリアドール フラメンテ パワーリザーブ(Historiador Flameante Power Reserve)」のブルーダイアル、ヴィンテージカーのホイールデザインがダイアル全体に炸裂する「レーシング・コレクション ヒストリアドール レーシング 2014(RACING COLLECTION Historiador Racing 2014)」、様々な素材で組み合わせるモジュール・ケースを採用した「ロブスト ブセアドール マンクアリ 1882(Robusto Buceador Manjuari 1882)」など、本年のCYSは相変わらずのくせ者ぶりを発揮している。